再生ポリエステルの運命

SDGsの観点から再生繊維が使われる場面が増えてきました。
廃棄されていたものが新しく生まれ変わるわけですから、
資源の無駄遣いの防止に貢献していると言えます。

再生繊維を使う目的が「資源の無駄遣い」だけであれば良いのですが、
「消費者へのアピール」というマーケティングの側面が多くなると、
こんなことが起こってしまうのです。

2022/9/20 日経新聞
”廃ペットボトル価格高騰 再生樹脂人気で取り合いに”
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC128P30S2A910C2000000/

2023/4/7 繊研新聞
”再生ポリエステル原料が調達困難に 飲料ボトル用との取り合いさらに”
https://senken.co.jp/posts/recyclepolyester-230407

再生繊維を使用していることを全面に押し出すことで消費者の支持を得ているとなると、再生繊維を使用し続ける必要があります。

各社が再生繊維を使用し続けると、その原料が不足します。廃棄されるペースが再生されるペースに間に合わなくなり、需要と供給が逆転します。

再生ポリエステルでいうと、原料となる廃ペットボトルの価格が高騰してコストが上昇します。場合によっては、原料が入手できなくなるかもしれません。そして、再生ポリエステルを使い続けるなら、上代を上げるか利益を削らなければいけません。
元々ヴァージンポリエステルより再生ポリエステルのほうが高いのに、更に高くなると。

ネットでは、「再生ポリエステルを作るために材料が足りない、というのは本末転倒」という意見もありますが、私はそうは思いません。

なぜなら、消費者は再生繊維を使っているかどうかなんて気にしていないからです。企業がそう信じて、再生繊維を使ってコストを掛けて作った商品が売れるのであれば、それは持続可能なビジネスになっています。

私も含め、安く作って安く売ることに集中してきて、その結果、日本は困ったことになってしまっています。
高くなっても普通に売れていくようになった時に、日本のサービスは正しく回り始めるのでしょう。

もしかするとそのきっかけがSDGsによってもたらされるのではないか、という気がしてきました。

吉川一平

展示会オンラインの主催者です。アパレルOEMのビジネスをして20数年の、そこそこベテラン。ある工場の社長から付けられた呼び名 「カットソーの貴公子」 は使ったことありません。

~略歴~
京都大学経済学部卒業後、伊藤忠商事株式会社へ入社。 退職するまでの12年間、アパレル部門で製品OEMビジネスに携わる。 2008年独立し、株式会社京都エモーションを設立し、現在に至る。

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