見事に外れた予想とタイムマシーンのリミット
2010年頃に私が想像した10年後の日本のアパレル業界の予想が思いっきり外れています。
・日本のブランドがジワジワだめになっていく → 正解
・弱ってきた日本のブランドを中国の会社が買いまくる → 不正解
私が伊藤忠に入った1996年の時点でアパレル業界はもうだめと言われていたのですが、そこから15年後、リーマンショックで消費傾向が大きく節約へと振れて行った時、となりの中国は力強く経済成長を続け、世界の工場から1大消費地へと変貌していたのでした。
「日本のブランドを買って、日中でビジネスを始めるに違いない」
ただ、この考えは大きな自惚れであったことを痛感しています。
14億人の成長する市場を抱える国が、日本のようなちっぽけで細かい国の市場を狙うはずありません。今考えると分かることなのですが、当時の中国の売場を見ていると全く洗練されてなくて、日本の方が進んでいるので、お金を持った中国の会社に丸呑みされると思いました。
コロナ禍で、世界の消費が変わっていますので、尚更、日本のブランドを中国が買うことは無いでしょう。
山東如意のレナウン、動向集団のフェニックス、結局、どちらも手を離れます。
他の日本のブランドでも中国企業に買われたという話は聞きません。
では、日本のブランドはどうしようも無いのか?というとそうではないと断言できます。ITなどのエレクトロニクスの分野でも完全に中国には置いていかれていますが、文化の成熟度は日本とはまだまだ差があります。
中国でも今の60代の成功者は現場からの叩き上げで、ロレックスとブランドロゴをこよなく愛する人達ですが、30代40代の人は、いいものを特別な空間で買いたい、という意識が強いようです。中国でも、単なる服ではなく、ライフスタイルの提案が必要だと言われています。
日本が辿ってきた道と似てませんか?
日本で売れ筋を追っかけて「コピー商品」をzozoで安く売るようなビジネスもありなのかもしれませんが、日本での成功モデルの中から中国の市場に適した分を落とし込む「コピービジネス」の方がワクワクします。
ヨーロッパ、アメリカ、日本が通ってきた道をすごい勢いで追いかけてきている中国ですが、まだ、追い抜かれるまでは時間ありますよ。
ヒタヒタと迫ってきているので、タイムマシン効果がどんどん落ちていくのは確かです。
ご意見、ご感想は、info@tenjikaionline.com 吉川まで。
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展示会オンラインの主催者です。アパレルOEMのビジネスをして20数年の、そこそこベテラン。ある工場の社長から付けられた呼び名 「カットソーの貴公子」 は使ったことありません。
~略歴~
京都大学経済学部卒業後、伊藤忠商事株式会社へ入社。 退職するまでの12年間、アパレル部門で製品OEMビジネスに携わる。 2008年独立し、株式会社京都エモーションを設立し、現在に至る。