Made by zozoの破壊力 part 1

zozoが始めた Made by zozo は1着から生産できる仕組みです。
1着から受注生産が可能になると、
アパレルで常に問題になる余剰在庫の問題を解決する仕組みになるかもしれません。
それを可能にしたのはサプライチェーンをデジタル化したから、
ということですが、どういうことか検証してみます。

今週は、その前提となる「余剰在庫」について考えてみます。

余剰在庫には3つの性質があります。

1つ目は、消費者に対しての在庫です。
多くのアパレル製品では「消費者がいつ何を買うのか分からない」ので、
アパレルは「消費者がいつでも買える」ように在庫を準備します。
過去のデータを分析して需要予測を行い、在庫の準備をします。
その予測が当たるかどうかは神のみぞ知るので、下振れすると在庫になる、
という仕組みです。

2つ目は、予算に対しての在庫です。
多くの企業では利益予算があり、そこから売上予算が決まり、その売上を達成するための仕入予算があります。
「仕入が不足すれば売上も不足する」という構図なので、
「売れるから仕入れる」のではなく「売るために仕入れる」
という面がどうしても出てきます。
結果、余剰在庫が生まれます。
余剰在庫処分をすることで、当初の利益予算は達成されなくなります。
売上未達+処分損=大幅未達となります。

3つ目は、製造に対しての在庫です。
多くのアパレルは、競合よりも安く販売することで、
販売数量が増やしシェアを拡大する、という戦略を取ります。
なので、仕入コストを抑制することは非常に大切だと考えられています。
多くの製品では、大量生産する方が仕入コストが下がるため、
「大量仕入をするために、販売するお店を大量に作る」
という戦略が生まれます。
いくら安くても消費者が購入する服の数量は変わらないので、
お店を増やして低コストで大量仕入をしたところで、
販売数は増えず、結果、余剰在庫となります。

この3つの在庫の発生原因を見てみると、
デジタル化によって解決できる問題はどんなことがあるのでしょうか?

1つ目の消費者に対する在庫は「消費者がいつでも買える」ための在庫です。
サプライチェーンをデジタル化することで、受注データを時間のロスなく製造データに変換することは可能になります。
店を構えて販売員を雇って商品を準備して販売する1枚に比べて、
販売側のコストは大幅に下がりそうですね。

2つ目の予算に対する在庫は、どうでしょう?
「消費者に対する在庫」という概念がなくなったら、
「予算に対しての在庫」という考え方もなくなるかもしれません。

3つ目の製造に対しての在庫は、どうでしょう?
受注データをロスなく製造データに変換することで、
多少、製造側の管理コストは下がると思います。
が、1枚ずつ製造データが来て、1枚ずつ対応していたら、
とてつもなく製造コストは上がりそうです。

ということは、結局、在庫はないがコストも上がって利益が減る可能性もあります。

ではなぜMade by ZOZOが成立するのか?

続きは来週。

吉川一平

展示会オンラインの主催者です。アパレルOEMのビジネスをして20数年の、そこそこベテラン。ある工場の社長から付けられた呼び名 「カットソーの貴公子」 は使ったことありません。

~略歴~
京都大学経済学部卒業後、伊藤忠商事株式会社へ入社。 退職するまでの12年間、アパレル部門で製品OEMビジネスに携わる。 2008年独立し、株式会社京都エモーションを設立し、現在に至る。

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