こんにちは。伊藤忠商事から独立して12年、アパレル業界24年 展示会オンライン 吉川です。今日は「アパレルOEMビジネス 見積の内訳」について考えてみます。
私はアパレルOEMビジネスに24年携わっているわけですが、見積を提出した時に、「見積の内訳を出して下さい」と依頼される場合があります。社内で発注書を発行するために必要、という場合と、値段が合わないから理由を知りたいという場合があります。
提出するためには工場にも内訳を出して貰う必要があります。そして、工場によっては出してくれない場合があります。
私も聞かれたら出しますが、基本的に出したくありません。自分達のコストを知られる=利益を知られるのが嫌、という面もありますが、だいたい、相場も決まっていますので、この点はあまり気になりません。
出したくない理由は、「時間の無駄」になることが多いからです。
用尺を知ることで生地の割振りを考えたりすることはあると思いますが、その場合、用尺だけで事足ります。布帛の場合は、原料発注が先行することが多いので、用尺は知っておいたほうがいいです。
工賃というのは、他の工場などと比較する時に分かりやすい指標かもしれませんが、形だけで工賃は分からないので、参考になるようでならないケースも非常に多いです。
ただ、実際によく出くわす場面は、見積提出 → 値段が合わず内訳要求される → 結局総額で値切られる というものです。しかも、その根拠が見積の内訳に基づくものではなく、「うちの原価率 上代の23%だから」という理論。
上代を決めるのはお客さんなので、どういうこと??という状況が発生します。
単に値段を下げたい場合に内訳を聞くのは、半分正解ですが半分間違いです。確かに、用尺計算を間違えていたりすることもありますので。。。
でも、ほとんどの場合、内訳から希望の値段に到達することは難しいと思います。逆に、修正コメントで付属が増えたり、用尺が増えたりすると、値上げしないと辻褄が合わなくなります。
では、内訳をきいて何に使えば良いのでしょうか?
値段を下げるために内訳を聞くことに対しては反対ですが、物の値段の相場を知るために内訳を聞くことは大切だと思います。
長く同じ業界で仕事をしていると相場感が分かってきます。
今や、同じ産地ではだいたい物の値段も同じです。ただし、いわゆる得意不得意によって、少し値段が変わってきます。
この点については、値段の内訳を聞いておくことは重要だと思います。
つまり、同じ製品の見積を依頼した時に工場によって値段が違ってくるのは、工賃によるものなのか、それともマージンによるものなのか、を分かっておくべきなのです。
そして、日本向けの細かいロットで考えた場合、出てくる値段は、たとえ同じ工場であってもタイミングや季節によっても多少の幅が出てきます。1つの基準として内訳を聞いておくことは意味があります。
・値切るために内訳を聞くことはあまり意味がない。
・他の工場と比較するために内訳を知っておくことは意味がある。
アパレルOEMビジネス 見積の内訳、いかがでしたか?
最後の欲しい値段が決まっているのであれば、そこだけで話をした方が解決に近づくことが多いのでは無いでしょうか?
日本ではあまりありませんが、今後は、アパレル側がサンプル作成までは自社で行い、出来上がったものに対して、各仕入先が入札で決めていくようなやり方になっていくような気がします。
アパレル側に用尺や縫製の経験やノウハウが溜まっていきます。アフターコロナでどのような消費活動の変化が訪れるか分かりませんが、最後は、本質を分かっているところが生き残るような気がします。
アパレル業界のニュースを7つ選ぶ #7picks は、こちら
その他、毎週月曜日配信のメルマガ「アパレル業界の〇〇な話」もよろしく。バックナンバーはこちら
展示会オンラインの主催者です。アパレルOEMのビジネスをして20数年の、そこそこベテラン。ある工場の社長から付けられた呼び名 「カットソーの貴公子」 は使ったことありません。
~略歴~
京都大学経済学部卒業後、伊藤忠商事株式会社へ入社。 退職するまでの12年間、アパレル部門で製品OEMビジネスに携わる。 2008年独立し、株式会社京都エモーションを設立し、現在に至る。