こんにちは。伊藤忠商事から独立して12年、アパレル業界24年 展示会オンライン 吉川です。今日は「アパレルビジネス ネット通販の実力」について考えてみます。
私はアパレルビジネスに24年携わっているわけですが、この24年で今回の新型コロナウィルスによる影響が一番大きいものと感じます。3月の百貨店や小売店の売上は、昨年対比50%前後となっており、4月には大市場の関東圏・関西圏で緊急事態宣言が出されたため、更に落ち込むことは間違いないでしょう。
では人は全く服を買わなくなったのか、というとそうではなくて、各社ネット通販に関しては昨対を上回っている状況です。
そこで、南充浩さんはブログにある通り、「『実店舗がダメならECやったらいいじゃん』的な安易な考えのアパレル経営者がいまだに多くいて、そんな甘いもんじゃないし、どうせそいつらコケるで」なのでしょう。
https://minamimitsuhiro.info/archives/6682.html
では、ネット通販の実力ってどうなの??という点について考えてみます。
ECをネット通販と呼ぶように、昔から通販というものは存在していました。
1876年に農学者の津田仙が、『農業雑誌』(学農社雑誌局発行)で植物の種を販売したことが国内初の通販とされています。(https://netshop.impress.co.jp/node/3063より)
その背景には、1871年の郵便制度が始まったことが挙げられます。新しい情報伝達方法が生まれて、それに合わせた販売方法が生まれたわけです。
ネット通販以前にも、カタログ通販、テレビ通販がありましたし、いまでもあります。カタログ通販、テレビ通販と比べるとネット通販は、色々な面で販売コストの低さで優位性がありますが、カタログ通販、テレビ通販のシェアを奪っているのか、というとそうでは無さそうです。ネットに繋がる人口が増えにつれて、ネット通販は金額/比率とも上がっています。一方、テレビ通販とカタログ通販はある一定金額を保っています。
( https://netshop.impress.co.jp/node/6587 )
ここから
①ネット通販の顧客は実店舗の顧客から流れている。
②ある一定数、カタログ通販、テレビ通販で購買することが好きな人がいる。
が分かります。
ネット通販の増加は、実店舗の落ち込みを全くカバー出来ていませんが、それはなぜなのか?購買自体をしていない、というのもありますが、実は、一番大きな原因は、「価格」ではないか?と考えています。客数x単価 の 単価 が落ち込んでいるのではないでしょうか?
ネット通販は、その販売コストが実店舗よりも低いし、値段の変更コストも低いため、値引き販売がしやすい、と言えます。クーポンという名の値引きが大量に出回っています。なので「指定買い」の場合、ネット通販の方が圧倒的に強いです。
「指定買い」の場合、そのブランドに対しての信頼が出来ているということなので、リピーターの可能性が高いです。
ただし、ネット通販と実店舗では、顧客を失うリスクに違いがあります。実店舗は実物を触れますが、ネット通販は実物が触れないからです。表に出ていない「顧客の声」は多そうです。そして、「触れなくても、商品到着のドキドキを楽しめる」人が一定数いて、その人達がカタログ通販、テレビ通販を利用しているのでしょう。
売上=「指定買い」+「ついで買い」が成り立つとすると、コロナ以前のここ数年の実店舗の落ち込みは、実店舗での「指定買い」が減少したからだと思います。
アフターコロナでは、「必要なもの」しか買わない傾向が強まるとので、更に「ついで買い」減少による実店舗の落ち込みは、大きくなるでしょう。そして、「ついで買い」で新規ユーザーを獲得できないところは、ネット通販での伸びも期待できないと言えます。
ネット通販は、信頼関係が成り立っている上での「指名買い」で、その実力が発揮され、その効果は自社サイトで最大になります。ネット通販が実店舗の落ち込みをカバーするためには、「指定買い」をどれだけ増やすか、にかかっています。「必要なもの」しか買わなくなる中で、「指定買い」してもらうためには、お客さんにとって「本当に必要なもの」を提案するしかありません。毎年毎月毎週、新しい服を提案することは、お客さんの為なのか、自分達の売上の為だけではないのか?
今の数字が「必要なもの」の量を示してくれているのだとすると、今までのアパレル業界が享受してきた、数十年前から続く既製服バブルが崩壊した、と考えられます。業界の人は見て見ぬ振りをしてきただけで、みんな気付いていたのではないでしょうか?
もう「時は戻らない」ので、方法論だけではなく、本質を見極める機会が来たことを、前向きに捉えたいと思います。
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展示会オンラインの主催者です。アパレルOEMのビジネスをして20数年の、そこそこベテラン。ある工場の社長から付けられた呼び名 「カットソーの貴公子」 は使ったことありません。
~略歴~
京都大学経済学部卒業後、伊藤忠商事株式会社へ入社。 退職するまでの12年間、アパレル部門で製品OEMビジネスに携わる。 2008年独立し、株式会社京都エモーションを設立し、現在に至る。