河合拓氏「アパレル業界新産業論」後編
7/13の繊研新聞で始まったターンアラウンドマネジャー・河合拓氏のアパレル業界新産業論という8回連載に対する考察の4日目です。
河合拓氏の経歴は、下記、プレスリリースの後半をどうぞ
アパレル“再生請負人”河合拓氏が特別講演/コロナ禍を生き抜く経営戦略を議論
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000025713.html
今回は後編の5~8回目の要約と考察をお届けします。
要約
⑤SDGsの正しい問題解決と真犯人
「企業の責任」に違和感
利益至上主義の民間企業に対して、環境問題の責任を全面的に問うことに違和感がある。
日本基準を設定せよ
この問題にこそ日本政府主導で日本基準を作り認証マークを付ける方法を提言する。基準を満たしている工場については、輸入時に優遇税制を適用するのはどうか?
⑥ 成熟市場の成長戦略はM&A
成長が止まり、イノベーションが起きにくくなった市場の競争セオリーはM&Aである。
行き場を失う投資資金
世界中で余っている投資マネーを活用して、正しい産業再編を成し遂げたい。
金融機関が狙っているのはPBR(株価純資産倍率)が1を割ったアパレル産業である。
不良債権はいずれ回収
一刻も早くビジネスモデルを変え、競争力を取り戻すためにはファンドという劇薬が必要である。正しい戦略の絵図を描くことができれば、必ずアパレル産業はよみがえる。
⑦ 新しい装いの提案はそもそも論の議論が必要
財務とデジタルを学べ
ファイナンスとDXの正しい戦略が組み立てられなければ、今後のアパレルビジネスは成立しない。
新常態時代の生活様式
世界が大きく変わるときは原理・原則までさかのぼり、ブランドとは何かを考えるべきだ。
そもそも論から話を組み立て、独自のポジションを確立すべきだ。
単なる「デジタルへの投資」を経営計画の中心軸に置くのは無意味である。SDGs(持続可能な開発目標)も「隠れた真犯人」と「正しい解決案」を自分の頭で論理的に考える必要がある。
⑧PLMの危険性とプラットフォーム争奪戦
PLM(製品ライフサイクル管理)を導入すれば、伝統的OEMでは、約50%の人員削減が可能となる。しかし、多くの商社は事業モデルを変えずにこれを導入し、減価償却費が増えるか、毎年のサブスクリプション(定額利用)フィーが上がり、中間流通コストは膨れ上がっているのが現状である。
調達減らしリユース
アパレル産業ではリサイクルが少ない。メルカリなどを通して、セカンドハンドの2次流通品が大量にCtoC(消費者間取引)に流れている。一方、アパレルは自らのブランドの安売りしかしない。アパレルは、調達をリデュース(半減)し、消費者から自社ブランドを買い取り、世界一の補正技術で再プレスし、リユースで3Rを充足すべきである。
業界の標準化を
日本のアパレル企業は99%が中小なので、誰かがセンターハブとなり業界の標準化を推進しなければならない。それを担えるのは商社である。
考察
横文字が多くて伝わりにくい部分もありますが、まとめると、
①SDGsは政府主導で行うことで日本の存在感も増す
②投資マネーを使って業界再編するべき
③「服とは何か?」そもそも論に向き合うべき
④調達を減らしてリユースの市場を拡大するべき
⑤商社はデジタルプラットフォームになるべき
となります。
③⑤は賛成出来ます。
消費者のワードローブにあるかないか、は、もはや、売れる売れないとは直結しません。
人は何のために服を買うのか?というそもそも論を本当に考えていかなければ前に進んで行くことが出来ない時代です。文化の成熟とともに、意味のないコト・モノには時間もお金もかけなくなっていきますから。
最後に、河合拓氏曰く、ここ数年、商社に働きかけてきたが採用されなかった、とのことですが、論理的な飛躍があったり、カタカナが多くて、よく分からない部分の多々ありました。そして、うまく営業が出来ていないようなのでSPIN式をお薦めしたいと思います。
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展示会オンラインの主催者です。アパレルOEMのビジネスをして20数年の、そこそこベテラン。ある工場の社長から付けられた呼び名 「カットソーの貴公子」 は使ったことありません。
~略歴~
京都大学経済学部卒業後、伊藤忠商事株式会社へ入社。 退職するまでの12年間、アパレル部門で製品OEMビジネスに携わる。 2008年独立し、株式会社京都エモーションを設立し、現在に至る。